『秋期限定栗きんとん事件』 米澤穂信 著

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

小鳩常悟朗と小佐内ゆきシリーズ、今度は連続放火事件である。
彼らの思考力が、およそ現実にはありえないであろうほどキレキレのため、小市民を目指す、との一事についてのみ何故か四苦八苦する部分に違和感を禁じえないのだが、その設定をひとたび飲み込んでしまえば本当によくできたミステリだと思う。
読み手が突っ込みたくなる部分、やきもきする部分、いろいろ織り交ぜつつも、最後にはきっちり回収され(ここは彼らの最も得意とする分野である)、寸分たりとも読者の期待を裏切らない。
衆人には読解不能な屈折した心情吐露、でもその真意はお互いだけには通じているというあたり、何か、良いです。大変甘酸っぽうございました。