『ダメな議論―論理思考で見抜く』 飯田泰之 著

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

主に政治、経済、社会の各分野で散見される「ダメな議論」の見抜き方を、実例とともに紹介している。「ダメな議論」とは「読んでもいいことがない、無用あるいは有害な議論」のこと。具体的には、次の5つのチェックポイントを用いる。

  • 定義の誤解・失敗はないか
  • 無内容または反証不可能な言説
  • 難解な理論の不安定な結論
  • 単純なデータ観察で否定されないか
  • 比喩と例話に支えられた主張

人は、自分が読んで心地よいと感じるものは割と簡単に信用してしまう。これが、表面上もっともらしく見えるダメな論説が簡単にまかり通ってしまう要因の1つになっている、と著者は説く。
本の選び方についても同じで、著者によれば、人は「自分の知らないことを知る」ために本を探しながら、実は「自分の知っている(漠然と感じている)ことが書いてある」本を購入している。また、読書を「自分の役に立てる」ことを目標としつつ、「自分の思想・行動に何ら影響のない(読んでも読まなくても変わらない)」本を読んでいる。つまり、「自分が読んで心地よいと感じる」本を選んでいるにすぎない、という。
なるほど。そういうものなのかも。
これを意識しているか否かで、読書を通じて得る知見の広がりにずいぶん差が出るのかもしれない。