『不機嫌な職場』 高橋克徳,河合太介,永田稔,渡部幹 著

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

職場環境を好転させるヒントがあるかな、と思い手に取った。が、結論からいうと、即効性があって納得できるような方策はほとんど示されていなかった。ギスギスした職場を一瞬で回復させる特効薬は、どうやらないようである。
前半は、どのようにしてギスギスした職場が広がってしまったのかを、分かりやすいフレームワークで説明している。大まかには以下の3つの要因。

  • 一に、業務のタコツボ化。成果主義が影を落としている。
  • 二に、情報共有の低下(会社の運動会のような行事がなくなった)。
  • 三に、インセンティブ構造の変化(終身雇用崩壊)。

これらが複合的に作用して不機嫌な職場が蔓延したという。大変納得性の高い議論だった。
こうした「構造的な要因」によって職場が荒れているわけである。その一方で、本書が提示している解決策は、最後の章を見ればわかるように、各個人の良心に頼る面が大きい。
お互いの感情をシェアする。仰ることは確かにその通りなのである。だが、こうなった原因が原因だけに、抜本的な改善のためには、トップダウンの思い切った社内改革も必要だろう。
職場がうまく行っている例として、グーグル、サイバー・エージェント、ヨリタ歯科クリニックが紹介されていたが、これらに共通することは、経営層が職場のギスギス防止のためにきちんとした施策を打っていることである(もはやギスギス防止などというレベルのものではないが)。こうした事例を、それこそフレームワークを提示して解析し、構造的な観点で打開策を提示してくれているとなおよかった。