『阪急電車』 有川浩 著

阪急電車

阪急電車

阪急今津線に乗り合わせたという緩いつながりの老若男女それぞれの物語。
何人かの登場人物は、車内での偶然の出会いで得た気付きから歩む道が変わっていくのだが、特に、人生の先輩たる老人・老婦人と、舵取りを誤りがちな若者との交流は、何か社会という装置の本来果たすべき正常な機能を見せてもらっている感じがする。車内での迷惑行為には知らぬふり、そんな現代の寂しい光景に対するアンチテーゼとも取れる。
文体は温かで、また筆者の「不快なもの」に対する視線は潔いものがあり、読んでいて心地よかった。