『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎 著

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

文体はスピード感、躍動感に溢れていて、これらと洒脱な会話とを両立させる技術にはいつもながら舌を巻く。緊迫した逃走劇の合間に、緩衝材を打ち込むように学生時代のエピソードが挟まれ、徐々に青柳らに対する心象が形成されていくつくりも心憎い。エピローグは、こうして形成されたものを裏切らない、正統派の味わい。
もう少しサスペンスチックな展開を期待していた身には若干物足りない部分もあったが、万人に安心してお薦めできる佳作だと思う。