『ラットマン』 道尾秀介 著

ラットマン

ラットマン

読み手のミスリードを誘って終盤は二転三転。騙される楽しさを十分に満喫することができる。
ただ、カマキリに寄生するハリガネムシの比喩や、過去の痛ましい行為など、金属が擦れる不快な音を聞かされているかのような要素が出し抜けにぽっと出てくる。「シャドウ」でもそうだったが、この著者、騙しの構図を作り上げるための「道具」としてこうした要素を躊躇なく配置する傾向にあるようだ。この辺のくだりについては、いささか抵抗はあっても読み手が飲み込めるよう、丹念に編みこまれたエピソードで読ませて欲しい気がする。