『手作り弁当を食べてる場合ですよ』 日垣隆 著

見出しごとに話の内容がころころ変わるので、トータルとしていろいろよく見えないというのはあるけれど、おもしろいなと思う見識が所々にあり。

そもそも相撲は国技ではない。明治42年に建てられた両国の大きな相撲施設が「国技館」と名づけられたゆえの誤解にすぎず、いかなる機関も相撲を国技とは正式に一度も認めていない。(p.122)

家族からの出奔も前近代では選択の余地はなかったが、近代社会では自由に選択できるようになった。しかし、家族以外の社会というものは、およそ自分の都合では決まらず、他社の都合の総和で成り立っているという事実と向き合うことが、自立のイロハである。(p.155)

我が家では、大学生になったら四年間、ブログの原稿料として学費と生活費を払うことにしていた。子どもたちは毎日、ウェブ上で日記をつける。その対価として原稿料を払う。さぼったら、その分を機械的に差し引く。疲れたら一行でもよい。(中略)
何より、少なからぬ未知の読者を納得させなければ成立しえないネット上の公開日記は、自分を客観視する可能性が増すだけでなく、我々の世代ではとうてい考えられないほど「文章力」があらゆる場面で求められる現代社会では、その力を高めて損をすることはない。(中略)
文章力の研鑽は、現代の若者にとって、ローリスク・ハイリターンなのである。(p.160)