『春期限定いちごタルト事件』 米澤穂信 著

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

久々にミステリーっぽいのを。
探偵役の小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、高校に上がりたてという設定で、図らずも時期的にはぴったりだった。
彼らは、好むと好まざるとに関わらず、数々の可愛らしい事件に遭遇する。ポシェット盗難事件、類似する2枚の絵画の謎、容器を濡らさずにココアパウダーを溶かすトリック等々。お上品なミステリである。北村薫の『空飛ぶ馬』のシリーズを思い出した。
しばしば登場する次のフレーズ、

小佐内さんとぼくとは互恵関係にあるけれど、依存関係にはない。どちらかがなにかから逃げ出したいとき以外は、ぼくと小佐内さんとは単なる知り合い以上のものではないのだ。

これが、読後は、違った風景に見える。最大の仕掛けはこれかな。
地表に現れている部分の雰囲気は一目ライトノベルだけれど、地中にはかなり本格的な根っこが広がっている感じがする。表紙に囚われて敬遠するのはもったいないですよこれは。