『ガリレオの苦悩』 東野圭吾 著

ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩

当時中学生くらいだっただろうか。ドラマ「古畑任三郎」が始まっていたが、私はそれを見る前に、どういうわけかノベライズ作品を先に読んだ(理由は忘れた)。これが大層おもしろかった。
本作『ガリレオの苦悩』も、何となくこれと同種のおもしろさを感じた。共通項は何だろう。探偵役の、わかりやすい偏屈なキャラクタとか、メイントリックの他に必ず入ってくる一ひねりなんかは、多分そう。転じて、明快なプロットということになるんだろう。映像化しても魅力が失われないであろうプロット。
しかし、5つの短編の中で1つだけ、映像化すると大きく魅力が損なわれるだろうなと思ったものがあった*1。大学の恩師との心の対話が美しい『操縦る』だ。これは取りも直さず、この短編が私の中の「小説としての」ベストであることの裏返しである。

*1:既に特番として放送されたようだ。