『ブログ論壇の誕生』 佐々木俊尚 著

ブログ論壇の誕生 (文春新書)

ブログ論壇の誕生 (文春新書)

タイトルにはブログ論壇とあるが、中身はこれに留まらない。ネット全体の出来事をリストアップしたような内容になっている。目次から、取り上げられている論点が一望できそうなので、書き出しておく。

I ブログ論壇はマスコミを揺さぶる
 第1章 毎日新聞低俗記事事件
 第2章 あらたにす
 第3章 ウィキペディア
II ブログ論壇は政治を動かす
 第4章 チベット問題で激突するウヨとサヨ
 第5章 「小沢の走狗」となったニコニコ動画
 第6章 志位和夫の国会質問
 第7章 安倍の窮地に暗躍した広告ロボット
III ブログ論壇格差社会に苦悩する
 第8章 辛抱を説く団塊への猛反発
 第9章 トリアージ
 第10章 承認という問題
 第11章 ケータイが生み出す新たなネット論壇世界
IV ブログ論壇はどこへ向かうのか
 第12章 『JJ』モデルブログ
 第13章 光市「1.5人」発言―ブログの言論責任は誰にあるのか
 第14章 青少年ネット規制
 第15章 「ブログ限界論」を超えて

普段からネットをウォッチしている人にとっては、復習という印象になると思う。あの議論の発端はあのブログだったのか、とか発見もいろいろあり、過去の総ざらいという感じで興味深く読めた。
しかし、本書からはブログ論壇の「先」はあまり見通せない。リアルの世論と対峙して政治や社会を動かす原動力になるには、ネット論壇の知見を集約するシステムが必要、と説きながらも、そのシステムが具体的に見えてこないからだ。
アメリカや韓国では上記システムの事例が見られる一方で、日本ではそのようなステップにまでなかなか昇華されないという。

第一に、日本でのネット論壇を担うロストジェネレーションは、日本の戦後社会の喪失期に育った被害世代であり、弱者階層であるという認識が蔓延してしまっている。
これはネットの空間をマイノリティ意識で覆ってしまい、リアルのマジョリティからは切り離されてしまったのである。
端的に言ってしまえば、彼らには、
「社会の中心を担っていく」
という自身がないのだ。