『エディプスの恋人』 筒井康隆 著

エディプスの恋人 (新潮文庫)

エディプスの恋人 (新潮文庫)

高校の事務職員として勤務していた七瀬は、一人の男子生徒を強く意識することになる。彼の周囲では、飛んできた硬球が破裂するなど、超能力者の存在を疑わせる現象がいくつも起こっていた。
七瀬三部作の最終作だが、二作目のラストとのつながりは説明されていないため、前作との時系列が不明のまま読み進めることになる。これは二作目より前の話なのかしら、とか、さらに一歩踏み込んで、藤子の時間旅行か何かが関与していて「彼」の周りで起こる事象は実は七瀬が…とかの展開を期待していた自分は、後半力が抜けてしまった。広げられた風呂敷は予想外に大きいものであり、伏線の意味を楽しみにしていたのにそれは風呂敷の前では芥子粒ほどの意義しか持たせてもらえておらず、がっくりきてしまった。そしてなにより、七瀬がテレパスであることの意味が希釈化されているのが残念だった。
七瀬シリーズを続けさせようという編集者にこれで引導を渡したとかいう背景があるそうで?その心意気やよし、だが、それはあくまで作品を離れた政治の話。
3作目でぶっ飛んだ「リング」3部作のことを思い出した。