『ドキュメント弁護士―法と現実のはざまで』  読売新聞社会部 著

ドキュメント弁護士―法と現実のはざまで (中公新書)

ドキュメント弁護士―法と現実のはざまで (中公新書)

弁護士の実務を取材したルポルタージュ。殺人、少年事件、性犯罪、交通禍、医療過誤、労働事件、隣人訴訟など、刑事・民事を問わず、また原告側・被告側の別なく、様々なケースが紹介されている。
本書は、事件の背景や当事者の心情についても踏み込んでおり、事件当事者の心労の大きさが痛いほど伝わってくる。弁護士は、その当事者の心痛にまず真摯に向かい合わなければならないわけで、少なくとも精神面で激務であることは間違いない。医師と同様、試験の成績には表れない適性がかなり求められると感じた。
今、司法制度改革による司法試験の合格者増の影響で、弁護士の平均年収が下がってきているという。本書の発行は8年前なのでこの辺りの分析はないのだが、業務の大変さと収入とを勘案したときに、今後は割に合わない職種になっていくんだろう。高収入目的の志の低い弁護士が淘汰され、本当に適性のある弁護士だけが残るような仕組みになっていけばよいのだが。