『フィンランド 豊かさのメソッド』 堀内都喜子 著

フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))

フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))

フィンランドへの留学経験のある著者による、フィンランドの紹介といった趣。
福祉の充実に目が行きがちだが、この国がうまくいっているのは教育の充実が大きいのではと思った。小中高、ほとんどのレベルの教師が修士号をもっているという。このような教師に学んだ優秀な生徒が、また教師を志す。

教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らして人々を導いていく

といった、教師を尊敬する文化が根付いているのは、上記の循環がうまくいっているからだろう。
フィンランドには一度だけ行ったことがある。木材を多用して落ち着いた雰囲気をたたえたヘルシンキ空港と、都市間を結ぶ道の脇に広がる森林の美しさと、微妙な風味のトナカイのステーキは強く印象に残っている。季節はちょうど今時分で、夕方も早い時間に真っ暗になってしまうのだが、そのことも、静かで厳かな土地の雰囲気を演出していたような気がする。
こういった雰囲気を、所々で思い出しながら読んだ。分析的なカチっとした文章というよりは、温かみのある文章で、大変読みやすかった。